飯田市羽場町、県道15号沿いに本社を構える不動産会社、横田商事株式会社。2022年8月に第30期を迎えた同社は、令和3年度飯田市起業家ビジネスプランコンペティションに入賞した価格査定システム「zika.jp(地価天気予報)」のほか、土地や住宅の配置や資金計画をシミュレーションできるシステム「セルフ住宅展示場」など、不動産に関わるシステムの開発に尽力してきた。その取り組みの背景にある想いとは。代表取締役の横田幸一さんにお話を伺った。
不動産情報システム「zika.jp(地価天気予報)」「セルフ住宅展示場」を提案。すべては「不動産中央市場」の実現のために|横田商事株式会社(飯田市羽場)
特許取得数は18件!お客様主導の住宅購入を可能にするシステムを続々開発
━━ 「地価天気予報」というサービス、とても画期的ですね! そういえば、私たち消費者が地価を知る術って、不動産屋に問い合わせる以外に思い当たりません。逆になぜ、今までこういったサービスがなかったんだろうと思いました。
横田 今の不動産業界では、そういった情報は各地域の不動産業者がもっているものですからね。ちなみに「ダイナミックプライシング」という言葉は聞いたことありますか?
━━ お恥ずかしながら存じ上げず……教えていただけますか?
横田 たとえば球場の隣にあるビジネスホテルの場合。野球の好きな人がそのホテルに泊まって試合を観戦したいと思ったときに、試合のない日の価格は4000円だけど、試合のある日にはそれが20000円に値上がりする。そういうことが起こる状況のことです。
━━ なるほど、なにかの要因によって、ものの価値や価格が変わるということですね。
横田 Amazonの商品もそうですが、「人気が上がると値が上がる」、つまり、需要に合わせて価格を変動させる仕組みが、ダイナミックプライシングなんです。土地に置き換えると、「景色のよいところがいい」「スーパーや病院が近くにあって便利なところがいい」といった需要がありますよね。本来なら不動産にも、価格を変動させるべき需要が当然あると考えて、この「地価天気予報」というサービスを開発しました。
この価格査定におけるシステムについては、特許を取得しています。ほかにも18件、特許を取得しているんですけどね。
━━ 18件ですか!いったい、どんな内容の特許を取得されているのでしょう?
横田 すべて不動産に関する特許になります。「ココプレ」という、希望の土地への住宅の配置や資金計画をお客様自身でシミュレーションしていただけるシステムも、弊社が取得した特許のひとつです。
━━ 「ココプレ」、少し試してみましたが、とても簡単でした。より具体的にイメージできるのがよいですね。
横田 さらに、住宅や土地の3Dデータをウェブ上で統合する技術に関しても特許を取得しています。今も、住宅の内部を覗き込める3Dはすでにあり、そのシステムを営業に活用している不動産業者はあります。ただ、3Dの住宅を3Dの土地に乗せたものはまだありません。そのシステムを実用化できれば、「この家のここの窓は、外からはこう見える」ということまでがわかるんです。
━━ それ、すごく大事! 賃貸の場合は内見すれば実際に見え方を確認できるけど、家が建つ前に想像するのはとても難しいですよね。
横田 このシステムが機能すれば、オンラインでの住宅展示場が可能になります。弊社では「セルフ住宅展示場」と名付けて商標登録も取っているのですが、これによって、住宅購入を業者主導からお客様主導へとシフトできるのではと考えています。家を建てた経験がある人はわかると思いますが、配置図は従来、お客様の意見を聞いたうえで、住宅メーカーの営業マンが作っていました。それがセルフ住宅展示場では、お客様ご自身で気に入った土地に気に入った住宅を納得いくまで何度も繰り返し配置してみて、最終的に自分たちの希望の配置図(当然予算に合った)を作成できます。お客様の意見がはっきりしているので、住宅営業マンにも判り易く伝わり、計画を進めることができます。
見据えているのは5年後、「不動産中央市場」の確立
━━ 横田社長が、さまざまな新しいことに挑戦されていることがよくわかりました。この先、目指していることがあれば教えてください。
横田 横田商事としては、5年以内に「不動産中央市場」を確立したいですね。
━━ 不動産中央市場……また初めて聞く単語です。
横田 はい、これも私が考えた言葉で、商標登録を取っていますから (笑)。
今の不動産業界は、各地域の不動産屋が持っている情報は共有されない、いわゆる情報の囲い込みによってビジネスが成り立っています。一方で、海外ではすでに大手プラットフォーム企業が不動産業に進出している例もある。そういった企業が日本へ進出してきたら、国内の大手不動産でさえ太刀打ちできないだろうと危惧しています。ですが、不動産に係る業者間でデータや特許に基づくシステムを共有することにより、「土地に住宅を提案する」、「中古住宅にお客様好みのリフォームを提案する」など、物件に多様なサービスを付加できるようになると考えました。先ほどご紹介したいくつかの特許も、この不動産中央市場を構築させるための手段なのです。これは昨日(9/4)の日経新聞の記事なのですが……。
━━ 「家余り1,000万戸時代へ」……。1,000万戸ですか⁉
横田 日本は今、こういう問題も抱えていいます。要は使い方がわからないということなんです。
━━ 不動産中央市場が確立することで、そうした物件のマッチングにも役立ちそうですね。
横田 情報を共有できるようになれば、たとえば銀行が、消費者のローンの額に見合う土地や住宅を紹介することも可能になります。
不動産に関わる国内のすべての企業が豊かになってほしい
━━ 横田社長が見据えているのは、目先の利益ではなく、2歩3歩先に訪れるであろう未来なのだということがわかりました。
横田 基本的な考え方は、「ビズトープ」という言葉にあります。これは、‟生物の生態系“を表す「BIOTOP(ビオトープ)」から着想を得て私が考えた、“企業生態系“を意味する造語です。川があって、草が生えて、動物が集まってきて……という自然界の生態系のように、差別化や競争をするのではなく、共存する。国内の不動産業界もそうあることが理想的だと考えてまして、その状態を実現するための方法のひとつが、不動産中央市場なんです。
━━ 共存しながら成長していく。素敵な考え方ですね。
横田 そもそも、不動産の価格が不透明であることが諸悪の根源。江戸時代、三井呉服店が反物に定価をつけて武家にも町民にも同じ価格で販売したことで繁盛したように、商品や物事をわかりやすくすることでビジネスチャンスが生まれるのではないでしょうか。住宅メーカー、不動産フランチャイザー、金融機関、広告代理店など多くの企業にこの取り組みに集まってほしいですし、ぜひ仲間になってほしいですね。
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