2022年度から始まった、I-Port.biz主催のリアル起業家交流会「Challengers MEET UP」。 2025年度に続き、2026年度も「いいだ創業塾」と連携し、飯田商工会館を会場に開催されました。
午前は創業に向けた実践的な学びの場、午後は先輩起業家によるピッチと交流会。1日を通して、「学ぶ」「語る」「交流する」が自然につながる構成となりました。本記事では、約23名が参加した1日の様子をレポートします。
学びと対話で“次の一手”が見えた日│いいだ創業塾/チャレンジャーズミートアップ開催レポート
創業時のつまづきを学び、実践的ワークに挑戦
いいだ創業塾 創業準備コース
午前中に行われたのは、「いいだ創業塾 創業準備コース」。講師を務めたのは、ナカミ創業研究所代表・中田麻奈美さん(中小企業診断士)です。これまで300社以上の創業・事業支援に携わってきた中田さんは、創業の“入口”で多くの人がつまずきやすいポイントを、実体験を交えながら丁寧に解説しました。
講義では、以下のようなテーマが、具体例とともに語られました。
- なぜ自分は創業したいのか(創業動機の明確化)
- どこに価値を置き、誰に届けるのか
- 事業化できる領域の見極め方
- 資金調達や利益計画の考え方
また、各テーマに沿って用意されたワークに取り組む時間も設けられ、参加者それぞれが自身の事業アイデアと向き合う場面もありました。
参加者は顧客設定や提供価値、収益構造など、創業の土台となる要素を一つひとつ整理。創業前に立ち止まりがちなポイントを言語化し、自身の考えを見つめ直す時間となりました。

【午後・第1部】先輩起業家によるピッチ&講評
午後からは、I-Port.biz編集部による「飯田チャレンジャーズミートアップ」がスタート。まずは先輩起業家によるピッチが行われました。登壇したのは3名。いずれも飯田市起業家ビジネスプランコンペティション(ビジコン)受賞などの実績を持つ起業家で、それぞれ7分間という限られた時間の中で事業への想いや現在の課題、今後の展望を語りました。
講評者には、日本政策金融公庫 伊那支店長・田渕勝巳さん、(株)みすゞ中小企業診断士事務所・内山拓己さんが登壇。さらにスペシャルゲストとして、I-Port.bizの立ち上げ期からのアドバイザーでもある(株)STYLY 取締役COO/事業構想大学院大学教授・渡邉信彦さんも参加し、それぞれの視点で3名のみなさんに質問を投げかけました。ピッチ登壇者と講評者のやりとりのなかにも、起業家が学ぶべきビジネスのヒントがたくさん含まれていました。
起業家ピッチ①:大曽根康人さん【AIクローン事業】
飯田市起業家ビジネスプランコンペティションで最優秀賞(起業家部門)に輝いた「medi coorde」代表・大曽根康人さんが取り組むのは、個人の言葉や感情、思考の癖を学習し、「もう一人の自分」として機能するクローンAIの開発。医療現場で「自分らしさ」を失っていく人を支えると同時に、ビジネスの現場では時間不足や属人化の課題を解決するツールとして活用されています。
実際に、AI導入によって業務時間を大幅に削減し、その時間で複数の資格を取得したというエピソードも紹介され、会場からは驚きの声が上がりました。

起業家ピッチ②:平澤さおりさん【おからを使った焼き菓子/mamenoha飯田】
起業から3年。「mamenoha飯田」代表・平澤さおりさんは、自宅の隣に実店舗を構え、健康志向のおから菓子を製造・販売しています。ピッチでは、融資や実店舗開設にまつわるリアルな経験を、等身大の言葉で語りました。
思い描いていた通りに進まない場面もあったものの、状況に応じて柔軟にかたちを変えながら事業を続けてきた姿勢に、会場からは多くの共感が寄せられました。
また、金融機関での資金繰りについても触れ、「必要以上に怖がるものではなく、事業に向き合ううえでの良い緊張感につながる」といった実感のこもった話に、参加者がうなずく場面も。創業期ならではの不安や迷いに対し、現実的な視点を示す内容となっていました。
起業家ピッチ③:村松佳美さん【助産院・産後ケア事業/よしみ助産院】
「よしみ助産院」を営む村松佳美さんは、助産師としての長年の経験と、地域への強い使命感をもとに、産後ケア事業への取り組みを紹介しました。
松本市から飯田下伊那へ拠点を移し、環境や前提が大きく変わるなかでも、「必要とされている場所で、自分がやるしかない」という思いでビジョンを守り続けてきた村松さん。現在は、助産院としてのお産に加え、産後デイケア事業にも力を注いでおり、産後の母親が安心して休み、相談できる「第三の居場所」を地域につくることを目指しています。その姿勢からは、制度や環境に左右されるのではなく、自ら道を切り拓いてきた強さと行動力が感じられました。
登壇後には、「地域に必要なことを、誰かがやらなければならないという覚悟が伝わってきた」「簡単ではない土地だからこそ意味がある取り組み」といった感想が寄せられました。

ピッチ後に生まれた“次の一手”
今回、特に印象的だったのはピッチが終わった後に行われた登壇者のみなさんへの質疑応答の時間。。村松さんが「産後ケアと連携できる宿泊施設がなかなか見つからない」と課題を口にしたところ、会場から次々と声が上がりました。

「東京では産後ケアの需要は高いが、インバウンドでホテルが埋まっている。むしろ飯田で受け入れるモデルも考えられるのでは?」といった渡邉先生のアドバイスに加えて、「天龍峡で日中利用なら紹介できそうな旅館がある」 といった具体的な提案も。その場で新しい連携の可能性が見えてくる瞬間でした。
【午後・第2部】参加者全員参加のテーブルトーク
後半は、参加者が複数のテーブルに分かれて行うグループトーク。
集客や広報の工夫、人とのつながり方、部下や仲間の育て方など、日々の実務に直結するテーマについて、率直な意見交換が行われました。
講評者やI-Port.biz編集部、関係機関の担当者も各テーブルに入り、 専門的な視点と現場感覚が交わる、打ち解けた雰囲気に。
会場のあちこちから、 「それ、うちでも使えそう」「同じことで悩んでいました」といった声が聞かれ、知恵を持ち寄る時間となりました。
おわりに
創業は、一人で考え続けるものではなく、語り、聞き、つながることで、少しずつ形になっていくもの。今回の「飯田チャレンジャーズミートアップ」は、そんなプロセスを体感できる一日となりました。

講評を務めた渡邉先生からは、「 ローカルでの起業には、地域のために何かをしたいという思いを原点にする人が多く、人とのつながりの中で価値が循環していく。そうした『恩送り』こそが、地方ならではの強みではないか」と語られました。
まる1日を通じた創業塾を終えて、参加者からは「予想以上に学びの多い時間で感動した」「知らなかった地域の起業家のみなさんと知り合うことができた」などの声が寄せられました。今後もI-Portでは南信州のビジネスパーソンのみなさんの出会いと学びの機会を創出する催しを開催予定です。ぜひご参加ください。






